2004年 2月13日

色んなことがありすぎて参った。
とりあえずこれからに理由ある訳でも無く場所を紹介されてここに来た。
仲間は必ず来るはずだから、そう言われて。
でも、正直"仲間"なんて考えられない。
そんなもの与えられても私にどうしろと言うんだ。

にくじゃが達の詰め所。
与えられたはいいけれど、ここには今は自分以外に誰もいない。
唯一、Moがここにいるだけだった。
日が明けて、2月14日。
世間ではバレンタインなのだろうが一人のにくじゃがが目の前に姿を現した。

「はじめまして。仮名子(かなこ)って言います。・・・仮の名前の子、って書きます」



『Only Doubles』 #プロローグ  ...萌迦Side



別に、この時点でビビッと来たわけじゃない。
ただ少し言葉尻が気になっただけ。

どうも、この子からは悲しみがにじみ出ている。

それがどうした個人の感情は個人で対応するしかない。
とりあえずそう思ってこの場の自分に言い聞かせた。

人見知りする性格らしいし、こっちもそうそう深く関わる気も無かった。
お互い距離を置いた、そんな一日。


日が経つにつれて封を切るようにたくさんのにくじゃがが生み出されてきた。
双子のティミスさんノルネさん、ネットワークの美香さん、Officeの愛海さんや他にもたくさん。

あっという間ににくじゃがは十人を超えて結構な所帯になってきた。
それなりに"輪"っていうのも出来てきたようだ。
どうあれ仲は悪いよりはいいほうがゴタゴタが起きなくて済む。

まあ、元々そういうのは苦手だったから詳しい事は知らないが。
そういう友情関係は基本的に傍観態勢でいるタイプだった。

それはこの"仮名子"という人物も同じだったらしい。
だが、こっちが好んで傍観しているのに対し、向こうは入る勇気が無く傍観しているだけのようだが。

自分が捻くれ者だっていうのは分かってる。
でも、人と触れ合う時間っていうのは非常に無駄な感じがする。
死別・絶縁、他にも原因は色々あるだろうが人はいずれ離れていくのだから。
付き合いが深くなればなる分離れた時が辛いんじゃないだろうか。
そんな風な考えがあるからいつも人とはあまり触れていこうとは思わなかった。

私に近付いてくる人だって"本当のこと"を知れば離れていくんだ。
まあ、決してこっちから教えることは無いが、どこかから漏れる可能性はありえなくもない。
その時に付き合いが浅ければそれほど重大な事件になることは無いだろう。
ゴタゴタは私一人で押さえ込められればそれで充分。



皆が寝静まった頃、一人で徹夜進行真っ只中だった。
別に原稿自体は急ぐ必要も無いのだがどうも早めに終わらせておきたい。
しかしストーリーがマンネリ化してる。
どうもこうも無くなんかありがち的。
もうちょっとこう何か無いかと脳内を探ってみるけど浮かばず。
一人の頭じゃ結局限界があるのか。


ドアが開く気配がした。
この時間帯に起きてるにくじゃがは流石にいないはず。
だとしたら誰だ、侵入者か。
念のため戦闘態勢、後ろから近づいてくるようなら即刻ぶちかます用意。

だが、どうも様子がおかしい。
ドアの様子が半開きにも満たない。ほんのちょっと、ってとこ。
覗いている、という感じ?

とりあえずこの場合どうしたものか。
正体が分かれば先制攻撃も辞さない構え

・・・来ない。

敵意が無い?入り込む気は無い?それとも様子見?
あらゆる可能性を頭の中に想定する。


そんな考えを知ってか知らずしてかドアの閉まる音がした。

何だったんだろう。一応、頭の片隅ぐらいに残しておく。



しばらくして。

ノックする音が一つ、二つ。

・・・うん、泥棒だったらノックはしない。
とりあえず警戒は解除。
念のため拳一つは作って構えておく。
開けるの待ってるようだし一応気配だけは殺してドアに近づく。

で、開ける。

「あ、あの、大丈夫でしたか・・・?」
明らかにうろたえてるのが見て取れる顔。
手にはご丁寧にお盆と何か入ってるカップ。
「大丈夫も何も」
先ほどまで原稿描いてた以外は特に異常は無かったはず。

「こんな時間に電気が点いてたから変だな、って・・・」
そういえば、と時計を見るとすでに丑三つ時超えてる。
寝る概念が無くなってから忘れてたが今の時間は電灯点いてたらおかしい時間か。

「で、何の用?えーと、仮名子さんだっけ?」
今考えるとなんでこの娘の名前がパッと出てきたのか未だに分からない。
『仮の名前の子』なんて同人的に使えそうな自己紹介されたからだったからか。

どういう意図でこんな時間に来たかは分からないがとりあえず差し入れらしいので
とりあえず部屋に入ってもらってありがたく受け取っておく事にする。

「あれ、その机のってもしかして・・・漫画ですか?」
この突然の来訪者は描きかけの原稿に興味を示したようだ。
「漫画が珍しい?」
よほどのお嬢様的な環境でも無い限りそんな状況は無い訳だが。
「あ、はい。こうして作っている現場を見るのは・・・」
なるほど、そっちか。

「じゃあ、こんな遅くにすみませんでした」
一回お辞儀して帰っていった。礼儀正しい娘というか。
どうせ詰まってたので最近の漫画事情とかについて一しきり語ってみた。
気分転換にはなった。

「『仮の名前』・・・?」
キーワードを口に出すと頭の中に一つの引っかかりが浮かび始める。
これをこうして・・・と。

これならうまくいきそうだ。


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