新しい服が届いた。


この前、秋葉原をふらついてたらとある店の中でなんか目が惹かれた。
色々見回してみたらかなりデザインが映えている。
値段は二の次にしても「これは使える」と感じ取って即決して買った。
若干スカートが短いのが残念だが、これぐらいなら簡単に継ぎ足せるだろう。


さて、どうやって持って帰ろうか、と。
普通の服ならともかくこの服だと着て帰る訳にはさすがにいかない。
秋葉原では違和感無いが山手線には流石に乗れない。


色々考えた末に宅配便に頼むことにした。
で、事のついでに持ってた荷物も送ったので
またその後にもう一回買い込んで結果的にその日の戦果が二倍。
Moの呆れ顔が容易に想像出来るが普段見慣れてるものを想像する必要もあるまい。


で、話は戻るのだが届いたこの藍色なメイド服をどうするか、だ。

保存スペースは別に問題無いがここで着る訳にもいかないし。
いや、どこで着るかは知らないが。

このまま眠らせるにも惜しいし
デスクトップに立った時にこの服着てたらまた面白くなりそうだが
わざわざハイリスクノーリターンをやらかす必要も無い。


これの処遇についてあれこれと考えを巡らしてるとドアの向こう側から足音が向かってくる。
とりあえず服はどっかにしまっておこう。
色々と面倒なことにならないように。


足音の主は仮名子さんだった。
三時だったので色々と持ってきてくれたらしい。
秋葉原の一件からユーザーと少しはくっついただろうか。

万が一、あの場面から最後まで進展してたとしたらしこたまいじめてやろうとも思ったが、
どうやらそんな事も無いようなので何より。
そんな事が出来る性格なら私も別に動く必要も無かっただろうし。
手ぐらいは握れただろうか。

仮名子さんにかすかに赤目を見られてたのは誤算だったが、否定はしたしこのまま立ち消えになるだろう。
探偵みたく深く嗅ぎまわるなんてことはしないし、
夢かうつつかの状態で見た疑問なんてのは大抵現実で否定されれば「夢の中の光景だ」でケリがつくものだ。

でも、念入りにやっておいたほうがいいかも知れない。
仮名子さんはともかくユーザーの方にはいずれバレる、というかばらすだろうから、
あらかじめ手元に引き込んでおいたほうがいざという時に動きを掌握しやすくなる。

ならば、だ。
今やろう。


「… や ら な い か ?」
「ふぇっ?!」



『Only doubles』#2' ...萌迦Side




「な、何を…ですか?」
「そ・れ。」

やりかけの原稿用紙。
暗中模索という暗闇の中に放り込んでそこに手を差し伸べるのが常套手段だって
どこかの宗教でもやってた。

「えええっ?で、でも…わたし、絵は…」

「…なにも原稿を描いてみない?っていってるんじゃなくて…原稿を仕上げるのを手伝ってみない?
 そんなに難しいことじゃないから…」

「でっ、でも…わたし、やったことがないですし…」

まあ、理屈ではそうでも実際に暗闇に引きずり込むのが大変だ。
誰だって知らないことには突っ込みたくないから。

「大丈夫。ペン入れしたものを、これから言うように仕上げてもらえればいいだけだから…ね?」
ならば進む道を照らせばいい。
具体的に言うと「これだけをまずやってみて」と指し示す。

「は、はい…わかりました。」
「はい、決定」


---


「…萌迦さーん、消しゴムかけ終わりましたー。」
「ん、ありがと。消しカスはそこにある羽箒で丁寧に払っておいて。」
「わかりました。」



「終わった?それじゃ原稿貸して。」

受け取った原稿をコピー機にかける。
仮名子さんがやるからに限らず、ペン入れが終わったらこうしてバックアップを取っておく。
これからの表現方法と話の流れによっては全く別のシーンになりうるからだ。
転ばぬ先の杖、という言葉はとみに名言だと思う。


「はいこれ。これはコピーだからあまり気負わず、練習か何かだと思ってやってくれればいいから。」


---

「じゃあ次にそこにある筆ペンでこことこことここをはみ出さないように塗りつぶして。ムラが出ないように注意してね。」

目印がついてる箇所を塗るように指示を与える。
簡単に聞こえるだろうが、その分だけ仮名子さんにかかるプレッシャーは結構大きいだろう。
見てると面白くなりそうなのでちょっと視線の重圧かけるのも兼ねて視姦する。


「あっ?!」
「あー、やっぱりはみ出しちゃった?」

案の定、やったようだ。

「ごごごごめんなさいっ!」
「いいっていいって。この位なら後でホワイトで修正かければ問題ないし。」

図面引いた以上にすっぽりと当てはまってくれたので
思わず声噛み殺して笑いそうになった。\w8

「…ホントにすいません、萌迦さん。」



---

「じゃ、次はトーン貼ってもらおうかな。」

ちょっと難しい作業だがどれくらい不器用なのかもちょっと見ておきたい。
原稿のコピーはとってあるから大丈夫だし。

「トーンって…何ですか?」
「これよ、これ。」

見た目はまさに紙 but 一枚数百円。
最近はイラスト製作ソフトにもスクリーントーン柄が入ってるのあるけど
アナログ原稿を扱うのならばこれを貼るのが一つの醍醐味ともいえる代物。
時間が無い時は製作ソフトのを使うが今回は時間があるからじっくりやれる。

「あ、これって…漫画の影とかお洋服とかの模様で見たことが…」
「そ。これを切って原稿に貼り付けたり削ったりして使うの。とりあえずこの原稿に貼って。
 見ててあげるから。」

割と無理難題だとも思うが後押しすればやってくれるようだ。
なるほど素直な性格。

「が、がんばります…」


このページに貼るのは・・・とトーンを選別してると仮名子さんから予想外の声が。

「め、萌迦さん、ところでハサミは何処に…」
そこの引き出しの中に、って え?
「ハサミ?何につかうの仮名子さん?」


「ですからこれを…切って原稿に貼るんですよね。」
「は?」

まあ、貼るけど。

「こう、身体を動かしながら切るのがポイント…」
空中で動く手のジェスチャーが表した意味に納得したと同時に暗雲が立ち込める景色が見えた。
だがそれがいい。
こうなんか何が起こるか分からない感じがすごくいい。
なるほどその発想があったか。

「そんな寄席の紙切り芸みたいなことをしなくても…このトーンナイフを使って
 原稿に当てたトーンをそっと…そっとよ?あんまり力を入れると下の原稿ごと切れちゃうから…」

一回やってみせたほうが良さそうだ。
ぶっつけ本番でやらせようとした私も悪かった。


トーンを当ててナイフで薄く切り抜くようになぞっていく。
刃先を持った指がトーンと紙の隙間を察知する。
その隙間をなぞるようにx軸を、原稿の上の線をなぞるようにz軸を通していく。
後は頭のイメージの濃淡に合わせてガシガシと削ったり重ねたり。


「ふぁぁ…」

「まあ、重ねたり削ったりとかする作業はとりあえずいいから
 その原稿の人物の上着にこのトーンを貼ってみてくれる?」
「は、はいっ。」

なるべく形が歪でない場所を選んでやらせてみる。
柔らかい筆が苦手でも固い刃なら案外扱えるかも知れない。包丁とかあるし。

しかし、仮名子さんの手がいつにも増して震えてる。
ひどく狼狽しているのが背中越しでも伝わってくる。
背後の私がどんな表情で視線を向けてるかもおそらく分かってないだろう。


---

「いタッ!?」

後ろで様子を見てたら口のところになんか液が飛んできた。
血の味だ。どこか切ったか。

「ちょ、仮名子さん大丈夫?!」
「は、はい………?!?!」

ああ、これは深いな。
指で押さえるだけじゃ止まらなさそうだ。
と、なればどうするか。
「ちゅぷ…」
「めっ、萌迦さん?!」

口の中にしょっぱい味と鉄臭い味がする。
やっぱり深いようでザラザラする切り傷の中からはいつまでも血が溢れてくるのが舌を通じて分かる。

「ちゅ…ちゅぷ…」
「あっ……」

あれ、なんか仮名子さんの反応が面白い。
やはり結構ウブなところがあるようだ。

「ちゅぷ……ん、止まったかな?じゃ、絆創膏を…」

このままやり続けてるとどうなるかも見てみたかったが
まあ、そろそろ大丈夫だろうから口は離す。


絆創膏はどこにしまったっけかな。
セロテープとガムテープならあるけど慣れてない人には酷だし。
最近使ってないから・・・ああ、あったあった。

「仮名子さんごめん。トーンナイフはよく切れるから手を切らないように注意して、っていうの忘れてた。」
「いえ…わたしの不注意で…すみませんでした。」

やはり最初からトーンは難しかったか。
もう少し引き下げるべきだった。


さて、絆創膏貼った手で作業やらせる、ってのも少し酷か。
ちょうどいい。
「話は変わって」な流れだしそろそろ出してもいいか。

あのメイド服。

なんか結果的に良い方向に進んだ気がする。

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濃紺色のメイド服を見せてみる。
こんなに近くにあるのが(秋葉原では見ただろうけど)珍しいのか興味は引かれたようだ。
もし、この手の中に釣竿を持っていたら軽く震動してるだろう。

「着替えて」
「え…これをですか?」
「脱いだのはそこら辺置いといていいから」
「で、でもこれ・・・」
「いいから着る!」

よし、有無は言わせない。

多少珍しい物とはいえ結局は服を着替えるってだけだ。
押し切って押し切れないことは無い。気弱な性格ならなおさらのこと。
男に女装しろ、ってのなら状況は違ってくるが。


---


着替えは見ないでほしい、と仮名子さんが言ってたので
少しばかり背後の原稿の隙間を埋めていた。

トーンでハサミ使おうとしたのは驚いたが
逆にそういう手もあったか、とも思った。
実際に使う機会は無いだろうが覚えておいてもいいかも知れない。


「着替え終わりましたけど…」
「あ、終わった?」

猫耳と藍色のメイド服に包まれた仮名子さんがいた。
はにかんでる様が初々しさを出しててなかなかに絵になってる。

せっかくメイド服を着せたのだからここは撮影しなければバチってものが当たるだろう。

仮名子さんが着替えてる隙にカメラを用意しておいた。
見た目は古いけれども、その分だけしっかりしていて丈夫。
なんせ十年以上前の物だがいまだに壊れてない。


「あ、あのぅ…もしかして…」
「撮らせて。」

他人にゆるやかに冷ややかな事を告げる時ってなんでこうも楽しいんだろう。
刃物の側面を相手の頬に当ててる気分だ。

「どっ、どうしてですか?これが一体漫画と何の関係が…?」
「資料用。」
「資料って…何故わたしが着ないといけないんですか?」

完璧に着込んでから言う台詞でも無いと思う。それは。

だって面白そうだし・・・とは言えないな、流石に。

「服のディティールだけだったらともかく、着たときや動いたときとはまた違ってくるし、
 ポーズを取った時に服がどうなるか?というのにリアリティを与えたいから。」

とりあえず最もらしく言っておこう。
まあ、実際に資料としても使うからウソって訳じゃない。

「そ、それじゃ萌迦さんが着ればいいんじゃ…」

お、食い下がってきた。
私が着たらしっくり来ないし、って言うと反撃されそうだな。

「…仮名子さん、カメラ使える?」

ちょうど手に持ってるカメラが目に入った。
私にとっては昔馴染みのものだから手に吸い付くように扱えるが
そうでなければそうそう使えやしないだろう。

「…いいえ。」

「でしょ?自分撮りするとポーズが決まっちゃったり動きが不自然になったりするから。
 たとえ資料でも妥協したくないの。ね?」

ここで畳み掛ける。
「必要なんだ」と思わせることであと少し残ってる抵抗感を取り払えばもう落ちるだろう。
手練れの指揮官がよくやる手だ。

「…はい。」

よし。
若干納得してない顔だが大丈夫。
コスプレってのはやってく内に自分で自分を洗脳していくのだから。
すぐに服に合わせて従属していくさ。

---

まあ、まずは軽く正面図や斜め図の静止状態から。
そこから徐々に手を動かしてもらったり座ってもらったり。
ボールを振りかぶったり目薬を差してもらったり、これはどう使うかは未定だが。

カメラで撮るのと同時にその合間の布のかすかな動きも目に焼き付けておく。
軌跡があって初めて躍動感が分かるからだ。


「手を自然に机について、布巾でテーブルを拭くように…そうそう…」

ここでのアングルは・・・横からかな。


お、フィルムの残量が0になった。
もうそんなに撮ったか。

次のフィルムは・・・と。

「あ、あのー…萌迦さん?」
「んー?」

「わたしは一体何時までこんな格好をしていれば…」

時計を見やればもう五時を回ってた。
原稿の手伝いもあったからもうそんな時間になってたか。
区切りもいいし後もうちょっとだけしたらそろそろ潮時にしようか。

フィルム装填完了。
時間も無いしやれる事も少ないだろうからこれはもうちょっと潤沢に使おう。


「もうちょっとだけ…そこで立ってくるっ、と一回転…」

一挙一動を見逃さないように連写。
ついでに反対回りも連写。
若干下着も写った気もするが後で確認しとこう。



さて、仮名子さんの様子がおかしい訳だが。

最初は恥ずかしがりながらやってた感じだったが
今の状態を見ると妙に色っぽい匂いがしてくる。実際に香りが出てる訳じゃないけど。
シャッター音にも反応示すし。

・・・・・・。

よし、ちょっと試してみようか。



「じゃあ最後に、そこに女の子座りしてみて…」

「女の子座り」はメイド服のシチュエーションなら無いことも無い。
館物なら庭でのシーンとかで結構使う。
だが、それは今はどうでもいい。


ある程度スカートが沈み込んだ辺りで・・・

「ひゃんっ!」

なんか声がしたんで咄嗟に撮っちゃった。
何が起こったんだ。床でも冷たかったか。



「そのまま両手を前について…もうちょっと身体を前に倒す…手に重心をかけて…
 そうそう、もっとお尻あげて…」

ここまで来るといわゆる『四つん這い』なんだが
直接言うと抵抗感が出そうなので(やらしいとは感じないかも知れないが)ちょっと回りくどくしてみた。

今は正面からシャッター切ってるが後ろに回りこめばもう下着が露出するぐらいだ。
でもゆっくりと周囲を回りながら撮っていく。
別段撮らない理由は無いんだがなんか気分の昂りを邪魔しちゃ悪いと思ったので。
まあ、私もその姿を見て楽しくなってくるので利害は一致してるが。



なるほど、言われればここまでやれるんだ。

今までどう生きてきたかは知らないが相当に人の言葉を求めたがる。
この場合は単なる雰囲気流されの延長線なだけなのかも知れないが、
それだけが原因じゃないぐらいは今までを振り返って見れば分かる。


「んふふ…オトコはこーいうの好きだからね…例えばユーザーとか?」


久しくそういった世界から離れていたから忘れてたが、
人の心を弄ぶのはやはり気持ちがいい。
ましてやそれが長く手中に残るとするならば、なおさら。


あ、今度ユーザーに会ったらこの事はそれとなくチクっておこう。
少なくとも悪化する事は無いだろう。


---


誰かが近づいてきてる気がする。

今この撮影中の状態を見られたらとんでもない事になりそうだが
私の部屋のドアが開かれるのは仮名子さん以外には滅多に無いだろうから問題視する事でもない。
開くんなら開くでノックぐらいはするだろうからその隙に体勢ぐらい戻せるだろう。
まあ、何か見られたとしたって足を止めさせる準備はある。
私だってここでは変な色眼鏡で見られるようなゴタゴタは起こしたくはない。



「?!」

「萌迦さぁん!お夕飯の時間ですよぉー!!今日の献立は姉さん直伝のカレ…え…」


時間が凍りついた。



来たのは誰だツインテールっぽい髪型で姉さんって言い方があるから確か愛海さんだっけか
いや今はそれはどうでもいいやることは同じだ
聞いた声だと活発系統だからこのまま静観はしそうにないなまず動くだろうその動く方向がどっちなのか
回るなら攻撃するし寄ってくるならひとまずは逃げないのだろう
となれば回った時はどう止めようかこの距離だと手で襟首をとらえるか
いやこの服は襟首が無いから下半身狙いかでもそうなると前のめりだから音が出る
となれば素手だと無理ってことか となれば道具かじゃあカメラ投げるかいやそれは洒落にならないことになる
そういえばこの前の釣り銭がまだポケットにあるはずだ
ちゃんと実績もあるからこれなら応急として大丈夫だ
問題は戦闘慣れしてると避けられるとこだが視線が向こういってて死角だし
まず間違いないだろうだが万一かわされたり外した場合はどうするか
そしたら避けたその隙を狙って引きずり込めばいい


当人同士はそれどころじゃないようだがすでに演算は完了した。
ダメになったらその場その場で決めよう。


さて、後はフリーズ解除した二名がどう動くか。
このまま見ないふりして戻ればそれで良し。
そうでなきゃ蟻地獄みたいに引きずりこんでそのまま封殺する。


時間が動き出した。
今にして思えばほんの一秒足らずなんだろうが、思考回路はもう充分引いた。



愛海さんの腰が前に行かずにその場で回転を始めた。

(「)

声、ってことはあまつさえ広めるか。

(たっ、)

ならば撃て。
ポケットの中に硬貨は五枚以上ある。

(大変ですぅみなs)


狙いは、どこだ、額か顎か喉か鳩尾。足でもいいだろう。

よし、ここからなら喉だ。頚動脈だ。

力加減は目一杯出す。1円玉であってもめりこませるぐらいに。
500円硬貨だったらご愁傷様だがそれは入ってないはずなので大丈夫。

そこだ。



「うきゅうぅ〜〜〜…」

よし。
いい感じにめりこんだ。

「おっと…」

抱きかかえるようにして体を確保。
そして念には念を入れて頚動脈をキュッと。仮名子さんには死角だから大丈夫。


「…疲れてるのかな?愛海さん寝ちゃってるみたい。」
「ね、寝ちゃってるって…」

とっさに出した言葉だが愛海さんの表情見たら、そうとは思わないだろうなあ。
完全に目開いてるし。


視線を向けると仮名子さんが訝しげな顔でこっちを見てる。
突っ込まれないように早めに話題を逸らすか。


「仮名子さん、今のうちに着替えて食事行って来て。愛海さんは見てるから。」
「で、でも…」

やっぱり疑ってるか。
そりゃ簡単には信じがたいだろう。

「いいから。ね?」

意見を押し付けたい時は笑顔で言えば結構通ると誰かが言ってた。

「は、はい…」


廊下に出てきた仮名子さんから顔が見えないように
愛海さんの身柄を視線から外すように回転させてうつ伏せ状態で部屋の床に置く。
柔らかいクッションに乗せたから大丈夫だろう。若干やかましいのが難点だが。


着替えている仮名子さんから目を背けてとりあえず愛海さんを見てた。
目を覚ましそうになったらもう一回絞めた。

---

仮名子さんはわざわざメイド服を畳んでくれた。
ハンガーにかけるものなんだけど・・・まあいっか。


廊下の外で硬貨の蹴られる音がした。
投げたのは意外に弾かれなかったようだ。
衝撃が分散されずに通った結果なので効果は抜群だったようで。

「……?」

表裏ひっくり返して疑問ありげな顔で見ている。

「あ、仮名子さんありがとう。」

だが回収。
削れてるとか曲がってるとかあったらどうしようかと思ったが
その心配は無かったようだ。



「…仮名子さん」

仮名子さんが一礼したから視界に入ったがそういえばこっちもあったか。

「…気に入ったのならあげるけど、それは外していった方がいいと思う。」

ネコミミが乗っかりっ放しだった。

「え?あ、はわゎっ?!」

リアクションが面白かったので思わず苦笑した。
まあ、同じ見つかるにしてもメイド服とセットよりはマシか。


そういえば「ネコミミ」だけだとそうでもないけど
「ネコミミ」+「メイド服」だと結構大きな問題に感じるのは何故だろう。
でも「メイド服」だけでもそれなりに大きく感じる。

そういえば空き巣か何かの目撃者の証言で一切顔についての証言が出なかった、って事例がある。
何故なら出てくる証言はほとんどが「全裸に気を取られていた」というものだけだったからだ。
ようするに服というのはかなり視界に入る面積が広いのでそれだけ重要である。ってことだ。

かく言う私も似たようなことはやった。
全裸にはなってないけど格好で印象をすりかえる、とかは。




そんなことをごちゃごちゃと考えついたがとりあえずこれで一件は落着した、と。
まだ若干の課題は残ってるが。


あと、もう一つ。
少なくとも今後、傍に置いておくとしたら仮名子さんで決定だということだ。
カメラ撮り出した目的は「モデル写真」も欲しかったが
『指示によってどこまでやるか=従属心』がどれだけあるかもついでに見ておきたかったからだ。

今回の件で確証した。



彼女は、
間違いなく私の手中に入れられる。


---

後日。


「…そぉ言えば前に仮名子さんメイドふ(ガッ!)きゅぅぅ〜…」
「まっ、愛海さん?!」

「あらら…愛海さんまた寝ちゃったみたい。ちょっと部屋まで連れて行ってくる。」


愛海さんはどうしてくれようか。
一応、あれから保護観察ということで今現在いるんだが、
いつまで経っても変わらないのでそろそろ対策も講じる必要がある訳だ。

記憶を消すとか出来れば一番いいんだが、それが出来る人はここにはいない訳だし。
トラウマとか与えて崩壊させるのは流石にやりすぎだろうし。
そろそろちょっとお話し合いでもしようか。


大丈夫。
二、三日立てなくなるぐらいだから。




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