そうして、初めてわたしは外の世界に出たんです。
部屋の中しか知らなかったので、風の感触とか草の匂いとかわたしには色んな事が新鮮でした。

「太陽」っていう電気以上に明るいものがあって、
それが落ちると電気を消した時みたいに暗くなるというのも初めて知りました。
毎日が変化してて、とても楽しかったです。


でも、それよりずっと寂しかったです。

外は不思議なことがたくさんありましたけど、話せるような人がいませんでしたから。
また叩かれるんじゃないか、ってずっと思い続けていたんです。
このネコの耳も最後に出会ったあの人以外には見かけることありませんでしたし。

どこにも行くところ無くて、雨の降らないところにずっといました。
水は川にたくさんありましたし石の床よりはずっと柔らかい寝床でした。
お腹はやっぱり空きましたけどいつでも草が食べられましたから大丈夫でした。


母様のこと思った時もあったんです。
叩かれるのは怖いですけど、周りに誰もいない方が辛いんだ、ってその時になって思ったんです。


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この世界に来てからどれくらい経ったのか分かりませんけれど、夜中の時でした。
たくさんの男の人達の声が聞こえてきたんです。
わたしの方をじっと見て何か話してたようでした。
そのあと掴まれて口を塞がれたり耳や胸を触られたりしました。
爪も立てられて、たくさん傷がつきました。

そうしている内に、後からまた男の人がやってきたんです。
その人はその時の集団の方達とは違っていました。


その男の人がわたしの昔の『ご主人様』です。
あ、お気を悪くさせてしまったら申し訳ありません。
今のわたしは、今のご主人様だけのものです。



大きな音がして、血がたくさん出たんです。
バタバタってわたしの周りにいた人達はみんな倒れて動かなくなりました。
その時は「死ぬ」っていうのがよく分からなかったんですけどひどく怖く感じたんです。

体がすごく震えました。
わたし以外の人は治らないんだ、って事もその時知りました。
そして、たくさん血が出ると二度と起き上がらなくなるという事も知りました。


全ての人が倒れた後、『ご主人様』はじっとわたしを見ました。
逃げる事というのも考えられませんでした。
治ってきてはいましたけど足にもたくさん傷があって動けない状態でしたから。

『ご主人様』は何かを訊ねてきたんですけど、
わたしには「トモダチ」とか「ジュウショ」とかよく分からない言葉でした。

わたしが話すことが出来なくて困っていたら、その人は何も言わずにわたしを背負いました。
眠ってしまったのでどこをどう歩いたのかは分かりませんけれど、
目が覚めたらどこかの家の中にいたんです。


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家の中は冷たい風とかが無くて暖かい場所でした。
床に布が敷かれてて心地の良い場所でした。


ちょうど目が覚めた時に『ご主人様』が来ました。
逆らう気なんてありませんでしたけど歯の奥はカチカチ鳴ってました。

袋に入ったパンを手渡されたんです。
その時、食べ物にも色があるんだってことも初めて知りました。
いつ叩かれるか不安でずっと『ご主人様』の方を見てたんですけど
それらしいことはありませんでした。「甘い」っていう味も初めて感じました。


しばらくはじっと無言だったんですが、
『ご主人様』はわたしの髪や耳を少しずつ触り始めてきました。

拾ったんだから好きにさせてもらう、ってそう言ってキスしてきました。
わたしはそれを受け入れました。
抵抗するのなんて出来ませんでしたから。


いつの頃か、首輪をはめてくださいました。
今の形とは違うんですけれど、わたしにはそれが宝物でした。
もう壊れてしまいましたけど。

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『ご主人様』に叩かれるのは母様の時ほど辛くはありませんでした。

母様の時は、近づかれると「来ないで」ってずっと思っていたんですけど、
『ご主人様』の時には、「早く来てほしい」って思えたんです。
痛い時は結構痛かったですけど、母様の時よりは気持ちいい時が多かったんです。


わたしがイくかイかないか、というのに関心は無かったみたいです。
あまり濡れていない時でも乱暴にピストンされました。
痛がってる時の顔は良かったけど挿入自体は良くなかったと怒られました。

出す回数がとても多いんです。
母様の所にいた時にたくさんの人達に挿れらましたけど、
『ご主人様』はその時と一緒か、きっとそれ以上だったと思います。

お尻を使おうとした時もあったんですけど、その時は入らなかったんです。
次に入らなかったら捨てる、って言われたので必死になりました。
毎日、指とかを使って拡くしていきました。捨てられたくなかったですから。

拘束されたままで一晩中放っておかれた事もありました。
出した後ですとか、途中で電話がかかってきた時などにです。
立ったままの状態だった時は眠るのが辛かったです。


煙草の火を押し付けられたこともありました。
灰皿の代わりだ、と言われて火が消えるまでずっと押しつけられました。
一日に何回もあって熱かったですけど、そのたびに『ご主人様』の所に居られましたから
楽しみでもありました。


首輪を外してその鎖で首を絞められながら挿れられる時も結構あります。
勝手に意識が飛んでしまう時もありましたけど、『ご主人様』はそのたびに顔を叩きます。


手足を固定されてナイフで文字を書かれたりしました。
クリトリスに刃が触れた時は思わず声を出してしまいました。
たくさん血も出ましたしどれくらい泣いたかも分かりませんけど
布も噛ませてもらえて「わたしにしか出来ない」って言われた時は嬉しかったです。


『ご主人様』は毎日来てくれる訳ではありませんでした。
寂しいって思う時もありましたけど、それを言ったら迷惑をかけてしまいます。

腕とか背中から血を流してる時もありました。


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ある時、身体が重くなったんです。
すごく気持ち悪くなって食べ物も食べられなくなりました。
わたしの様子を見た『ご主人様』は「しばらく何もしない」って言ったんです。
捨てられる、って思って泣いたんですけど「子供を産め」って言葉を聞いて、
わたしがそういう状態なんだってのを教えられました。

ご奉仕出来なくて辛かったですけど、『ご主人様』の言い付けですからじっとしていました。



半年ぐらい経ってその間中、少しずつ膨らんできて
ある時、お腹がものすごく痛くなりました。
それを言ったら目隠しされて、薄暗い病院かどこかに連れていかれました。


酒瓶を足で押し込まれた時もありましたけど、それよりも大きかったと思います。
瓶だったら抜いてもらえればどうにかなりますけど、
赤ちゃんは自分で出さなければ痛いのが止まらなかったのは辛かったです。




赤ちゃんは女の子でした。
やっぱりこのネコの耳ではなくてちゃんとヒトの耳をしていました。
少しだけ寂しかったですけど、わたしみたいにならないのは良かったって思います。


母様にはよく叩いて躾けられましたけど、わたしには同じことは出来ませんでした。
『ご主人様』にそう言ったら何度も叩かれました。
子供のことは本当によく分かりませんでしたけど
"『ご主人様』のもの"だから大事に扱おうって思いました。

子供の名前、ですか?
"きあめ"って言うんです。
わたしの名前から少し変えたんです。
本当は『ご主人様』の名前も欲しい、って言ったんですけどそれはダメだ、って言われました。

『ご主人様』は子供を育てるための本をくださいました。
字はあんまり読めませんでしたけど絵があったので分かりやすかったです。

母乳を与えることも本に描いてありました。
今でも、痛むぐらいに絞ると少しだけ出るんですよ。
そういえばあの子もとっても母乳を飲む子でした。

目の色も髪の色も違いましたけどあの子もわたしと同じ傷が治りやすい体でした。
子供に刃物を持たせるのはダメだ、って描いてあったんですけど
『ご主人様』は止めませんでした。
刃物を間違って使って何度か血を出したようですけど、すぐに塞がっていたみたいです。
泣くこともありませんでした。



『ご主人様』は、子供を産んだ後のわたしをまた妊娠する前のように使ってくれました。
縛られたり使われたりするわたしを子供に見せるような事もしました。
子供に見られるのは、少しだけイヤでした。言えるはずもありませんでしたけど。



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お客様が来たんです。
いつものように『ご主人様』が出たんですが、その日の様子は変でした。
大声が聞こえるのはいつもの事だったんですけどその日に限ってはバタバタしてました。


しばらくして声が止まりました。
でも、たくさんの人の足音が聞こえてきたんです。
『ご主人様』一人じゃない、というのだけは分かりました。

わたしの目の前に現れたのは知らない人達でした。
そして、『ご主人様』がその人達の足下で引き摺られていました。

『ご主人様』からはたくさんの刃物が刺さってて、たくさんの血が出ていました。
わたしと子供の目の前で、続けて何度も何度も刃物が刺さりました。
『ご主人様』がわたしに対して使う刃物とは別の物のようにその時感じました。


子供が飛び出していったんです。
『ご主人様』に刺さってた刃物を引き抜いて飛びかかっていったんです。
その人達は首を掴んで壁に叩きつけたのを覚えています。
頭からたくさん血が流れていたのを覚えています。
その後、持ってた刃物で刺されて・・・


そこからは何も覚えていないんです。
ただ、また暗いところに押し込められたのだけは覚えています。




わたしが、あの時もう少し強く抱えてたら死なずに済んだのかなって思うと泣いてしまうんです。
だから、ご主人様にはたくさん責めてもらいたいんです。
あの子を死なせて、本当にダメなネコなんですから。

でも、今も刃物は怖いんです。
その日の光景を思い出してしまうんです。
他のことでしたらどんな事でもしますから刃物だけは、お許しください。


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