また真っ暗な部屋でした。
子供の時にいた部屋よりは、まだ灯りのある場所でしたけれど、
太陽の光を知ったわたしにはその部屋は暗く感じました。



『ご主人様』と子供を失ったわたしは、ただ呆然となっていました。
母様が来ない日や、初めてこの世界に来た時の夜みたいに何も考えることが出来ませんでした。
「死ぬ」って事は知っていたつもりでしたけど、
「一生会えない」というのをずっとずっと先まで思ってみたらすごく泣きました。

誰か男の人が入ってきたんです。
何かを言っていたようでしたけど、ほとんどの言葉が耳に入りませんでした。
知らない人に何かをされるのは慣れていたはずだったんです。

ちょっとだけ落ち着いたら「買ってきた」という言葉は耳に入ってきたので
多分襲ってきた人達とは違うんだと思います。
それがどういった人達だったのかはもう分かりませんけれど。

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何日も呆然としていたわたしをその人は叩きました。

叩かれてもただ痛いだけでした。
何も感じられなくてヒリヒリしただけでした。
でも、少しだけ「現実なんだ」って感じが戻ってきたんです。

まだ、失った悲しさはありましたけど戻ってこれたわたしは目の前の人をじっと見ました。
「飼い主様」とわたしは目の前の人を呼んでいました。
『ご主人様』、と呼ぶとやっぱり思い出してしまいそうになるんです。
今は、少しずつ落ち着いてきていますけど。




腕を出せ、と言われました。
そしたら腕に注射器を刺されました。
薄く色の付いている液体がわたしの中に入っていったんです。

その時には何も起こりませんでした。
そのまま手錠や足枷で動かせないようにされてどこかへ部屋から出て行きました。
薬の効果は少しずつ分かってきました。
身体がとっても熱くなってきたんです。
深く息を吐かないと収まらないぐらい心臓が大きく鳴りました。
でも、動けませんでしたからその状態がずっと続きました。

その時まで色んな事を考えていました。
でも、身体の熱さで何も考えられなくなりました。



時々、飼い主様はわたしに近づいてきて触ってほしいか、って尋ねられました。
わたしは戸惑いました。
ずっとそんなの聞かれたこと無かったんです。
母様や『ご主人様』に「イヤ」なんて言ったら何度もぶたれてしまいますから。
わたしがそう聞かれるのなんて今までありませんでした。

何も言えないでいると飼い主様はわたしの側を離れていきました。
そうするとまたわたしは一人になりました。


意地とか、恥ずかしいとか、そういうものではありませんでした。
わたしが何かを望めば絶対に叩かれる、ってそんな事をその時に言った気がします。
そしたら、飼い主様はたくさん触ってくれました。

涙がたくさん出ました。



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男の人を手間取らせてはならない、って言われました。
だから自分から動いたり奉仕したりしなくてはならないと言われました。
母様にも『ご主人様』にもそんなことを言われることなんてありませんでした。


口を使って感じさせるやり方を教えてもらいました。
今までずっと咥えてから髪を掴まれて揺り動かされるやり方でしたから。
喉の奥とかに触れて咳きこんだ事も多いんですけどそれでも気持ち良かったんですけれど。

人前で自分のシてる姿を見てもらう事もありました。
たくさんの人の目に囲まれると少しだけ怖くなります。
でも、熱くなってくるとその怖い気分が不思議と熱さになってくるんです。

縛られて鞭を打たれたりロウをかけられたんですけど、
あんまり痛くありませんでした。
飼い主様は妙な顔をされてましたけど。

一つ覚えられると注射器で薬を打ってもらえました。
だから、たくさん覚えようって思いました。
長く打たれない期間が続くと、軽く触れられるぐらいでは感じなくなってしまうんです。
抓られるほどでないと声を出せないんです。


大きな犬五匹と一緒の檻に入れられました。
そのまま飼い主様はどこかへ行ってしまいました。

その犬達は盛ると必ずわたしを噛みました。
ちゃんと射精させてあげないとその間ずっと血が出るくらい噛まれ続けます。
一回で一匹ではいつまでも終わりませんから口や手を使って出してあげました。

犬用便器だと言われましたが、
それでも檻から出してもらった後、飼い主様にちゃんとわたしを使ってもらえたのは嬉しかったです。

飼い主様に話しかけてもらえてわたしもそれに答えることが出来て、
言葉が伝わるのって大事なことだって思いました。


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ある日から、お客様というのを取るようになりました。

この手袋とか服とかも、そのために着せてもらったものなんです。
気持ち良くさせるためにとかそういう意味があるそうです。

その時から、わたしの"あきめ"という名前が今の「諦女」になりました。
"きあめ"と離れてからずっと使うことの無かったわたしの名前でした。
平仮名のままだと色々と面倒なことがあるんだそうです。
この漢字は、人の言うことをよく聞くようにと付けられたんだそうです。
後で本当の意味が分かりましたけど、それでもやっぱりわたしにいい字だと思っています。


いつも、どこに移動するのかは分かりませんでした。
アイマスクとギャグボールをされて箱のようなものに詰め込まれて
車か何かで移動させられていたからです。
時々、バイブを挿れられたまま移動する時もありました。

移動時間は不安がありました。
このままどこかに捨てられるんじゃないか、って。
でも、人の声が聞こえている限りは安心出来ました。


目の前が開けた時の光景はその時によってさまざまでした。
薄暗くて広い一室だったり、水の施設だったり、高級そうな部屋だった時もありました。
お客様の数もやっぱりさまざまで、一人や数人というのが多かったですけど、
一度に何十人という事もありました。女性がお客様だった時もありました。

始められる前にお客様の名前もたくさん聞いたんですけれど全く覚えられないんです。
一度きりというお客様も結構多かったのですけど、何度か、というお客さまもいるんです。
顔が、全然分からないんです。
服装の色は覚えられるんですけれど会うたびに変わってしまうので分からないんです。

でも、一度臭いを嗅いだり指を舐めたりキスやフェラをすれば思い出せるんです。
不思議な顔をされますけど本当にそうなんです。



お客様の前に来た時は最初に「よろしくお願いします」って必ず言います。

でも、移動中にバイブを挿れられていた場合はほとんど言葉が出てこない状態です。
そういう時はお客様もすでに準備が出来ているので言葉は無いです。

そうでない場合は、話をしたり軽く触られたりします。
耳や尻尾が珍しい、ということもよく言われます。


いくつかに分かれてる鞭で叩かれることはありましたけど、それだとあまり痛みが無いんです。
短いのとかはちゃんと痛いんですけれど。
針で刺された時、それでなんだか満たされました。
たくさんの玩具を使われる時もありました。
イってもイっても止まってくれないので意識がなくなってしまいました。




電話が鳴って、少しして玄関のドアが開くとそこで終わりになります。
満足した顔をしてもらえればわたしも嬉しいんですけれど、
途中だったり何か不満気な顔だった時には本当に申し訳ない気持ちになります。


部屋の中に戻ってきた後は注射器を打ってもらえます。
そうするとまた身体が熱くなってくるんです。
また、触られただけでイきそうなぐらいになるんです。


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その日、聞き慣れない音がたくさん聞こえました。
普段は鞭の音や叫ぶ声しか聞こえないんですけど、その日はそれ以上に
鍵や扉が開く音とかいつもより多くの女の人の声が聞こえてきました。
あちこちにある扉が開いているようでした。
何かを指示しているような声だったり、喜んでいたりする声がよく聞こえました。


わたしのところにも女の人が鍵を開けて入ってきました。
いつも鍵を持っているはずの飼い主様はいませんでした。

新しい人なのかなって思っているとその女の人は手を伸ばしてきました。
「解放」という言葉を聞きましたがやっぱりよく分かりません。

とりあえず来て、と言われました。
飼い主様の命令無しで動く訳にはいかなかったので困っていたら
許可は取ってあるとそう言いました。

手を引っ張られて誘導されました。
大きな車の中にたくさんの人と一緒に入れられました。
今度の移動には目隠しも箱みたいなものに詰め込まれる事もありませんでした。


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下ろされた場所は白いベッドや白い部屋がたくさんあるところでした。
病院の一室だったんだと思います。
お医者様と思える人達もたくさん見かけました。
わたしは、ここまで連れてきた女の人から一人のお医者様へと引き渡されました。

そこは鉄格子も無くて、とても広くて明るくて不安になる場所でした。
柔らかいところだったのですけれど眠れませんでした。
落ち着かなかったんです。

しっかりした服も着させてもらいました。
でも、胸とかが完全に塞がっている服は息が苦しくなるんです。
呼吸が出来なくなるようなそんな気分になるんです。


その場所に来て飼い主様と会わなくなって何日も経っていました。
どこかへ連れて行かれる時は長くても一日や二日間だけでしたから
何かいつもと違うのはひしひしと感じていました。
その間中、何もされなかったのも変に思ってました。
服を脱いでもすぐに着せられましたしご飯も何もしなくても食べさせてもらえました。
不安ばかりでどうしようもありませんでした。


飼い主様から何日も注射が無くて身体の感覚が無くなってしまっている状態でした。
不安で不安で血が出るぐらいまで爪を立ててようやく痛みを感じられました。
傷つけられる事もなくてすごく寂しい毎日でした。

お医者様は飛んできてすぐ話をしてくれました。
注射を何日も打たれてなくて苦しいということを言ったらすぐに打ってくれました。
飼い主様の液体とは違う色でしたけど、打たれた途端に身体の調子が戻ってきたんです。





話をする中で、お医者様に飼い主様のことを聞きました。

わたしは「売られた」のだそうです。
あの日、すぐに買うのを決められたのだ、と。


いつも「売られる」という言葉を飼い主様から聞かされていました。
飼い主様とはずっと離れてしまうけど、その代わりに別の飼い主が来るんだ、って。

いつでも離れられるようにしておけ、
離れる時になって泣いたりでもしたらどこかへ捨てる、
一度離れたら絶対に会う事は無い、と「売る」ということに関してそう言われました。

でも、「売れる」ということは飼い主様にとってすごく良い"物"になれたんだとも聞きました。
本来はただの"物"にお金の価値が出てきてるから、って。
だから売られることになっても泣くことは無いんだ、と飼い主様は言いました。


「捨てられる」よりずっと優しく感じる言葉でした。
離れてしまうのは寂しいですけど、場所も分からないで独りになってしまうより
ずっとずっと優しいです。




でも、やっぱり泣きました。


飼い主様の姿はそれ以降見ていません。
でも、少しずつお医者様と話をしていく内に悲しい気持ちは落ち着いてきました。
これから新しい人はたくさん来るし、前のお客様にも会えるかもって言われました。


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お医者様はわたしをここへ運んできました。
この檻も置かれる時に作っていただきました。
ここは広くて不安だったんですけど、これは狭くて見慣れたものですのでとても落ち着きます。


次にふさわしい人をここに呼んでくる、と言ってました。
そして、来てくださったのがご主人様です。



本当はご主人様の前でこんな事をお話ししてはならないとは思っています。
でも、今この時間と、そしてご主人様がいずれ飽きられる時まで
わたしはご主人様のものです。



薬は良くないから、って少しずつ量を減らしていくそうです。
長く打たれていないとものすごく強く叩かれないと感じなくなってしまうんですが、
それだといつか不都合だから、とお医者様は言いました。

「痛い」と口走る事もあるかも知れませんけどご主人様はお気になさらないでください。
わたしはそれでとっても気持ちが良いですから。
ご主人様の望むままに扱ってください。
そうされているととっても安心出来るんです。ご主人様を感じていられますから。



・・・・・・あの、ご主人様、
いじめられたこととか、思い出していたら、
その、腿まで伝ってしまうぐらい興奮してしまいまして・・・、
もしよろしければ、たくさんお仕置きをしてください。

わたしは、はしたなくて何よりダメなネコですから・・・



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